2026年9月15日、国土交通省から「令和8年都道府県地価調査」が発表されました。
滋賀県では、住宅地、商業地、工業地のすべてで前年より上昇幅が拡大しました。なかでも草津市や守山市など、JR琵琶湖線沿線の住宅地・商業地は引き続き強い動きを見せています。
一方、県内のすべての地域が同じように上がっているわけではありません。滋賀県の住宅地は、上昇地点が103地点あるのに対し、下落地点も107地点あります。県平均がプラスでも、場所によって動きが分かれる「二極化」が進んでいることが分かります。
今回は、2026年7月1日時点の基準地価から、テナントテラスの対象エリアである大津、草津、栗東、守山、野洲、近江八幡、湖南、甲賀の8市を中心に、滋賀県の最新の地価動向を見ていきます。
基準地価とは?公示地価との違い
基準地価は、都道府県が毎年7月1日時点の基準地について、1平方メートル当たりの正常な価格を調査し、公表するものです。正式には「都道府県地価調査」といい、一般の土地取引価格を考える際の指標の一つになります。
国土交通省が公表する「地価公示」は1月1日時点、基準地価は7月1日時点です。調査地点は一部重なりますが、同じではありません。そのため、公示地価の平均価格と基準地価の平均価格を直接比べて、「半年でいくら上がった」と判断することはできません。
今回の基準地価は、2026年の公示地価から約半年後の市場動向を確認できる資料として見るのが適切です。
滋賀県は3用途すべてで上昇幅が拡大
滋賀県の用途別対前年平均変動率は、次のとおりです。
住宅地 プラス0.6%(前年プラス0.2%)
商業地 プラス2.6%(前年プラス2.1%)
工業地 プラス4.9%(前年プラス4.2%)
住宅地は小幅ながら上昇が強まり、商業地と工業地も上昇幅が拡大しました。平均価格は、住宅地が5万100円/㎡、商業地が10万7,000円/㎡、工業地が3万600円/㎡です。
全国平均は住宅地プラス1.0%、商業地プラス2.9%、工業地プラス3.3%でした。滋賀県は住宅地と商業地では全国平均を下回るものの、工業地は全国平均を上回っています。
滋賀県の用途別対前年平均変動率。国土交通省「令和8年都道府県地価調査」をもとに作成。
県平均が上がっても、住宅地は二極化
滋賀県全体の平均変動率はプラスですが、地点数を見ると違った景色が見えてきます。
住宅地253地点のうち、上昇は103地点、横ばいは43地点、下落は107地点です。上昇地点より下落地点の方が4地点多く、平均値だけを見て「県内の住宅地は広く上がっている」と捉えることはできません。
一方、商業地は91地点のうち56地点が上昇し、下落は20地点。工業地は22地点のうち20地点が上昇し、下落地点はありませんでした。
交通利便性や生活利便性が高い地域、駅前・幹線道路沿い、企業立地に適した地域へ需要が集まる一方、郊外の既成住宅地などでは下落が続く地点もあります。用途と立地による差が、滋賀県の地価を読むうえで重要になっています。
8市を比較すると、商業地の強さが目立つ
8市の市内基準地を用途別に集計した対前年平均変動率は、次のとおりです。
草津市 住宅地+4.53% 商業地+8.70%
守山市 住宅地+3.59% 商業地+6.33%
大津市 住宅地+2.18% 商業地+5.57%
栗東市 住宅地+2.64% 商業地+4.40%
野洲市 住宅地+3.06% 商業地+4.21%
近江八幡市 住宅地+0.74% 商業地+3.47%
甲賀市 住宅地-0.29% 商業地+1.69%
湖南市 住宅地-0.37% 商業地+0.37%
8市すべてで商業地の平均変動率がプラスとなり、住宅地より高い伸びを示しました。特に草津市、守山市、大津市では、商業地の上昇が目立ちます。
市内の継続基準地の変動率を用途別に単純平均した参考値。基準地の構成は市ごとに異なります。
草津・守山―駅周辺の商業地がけん引
8市の中で最も高い伸びを示したのは草津市です。全用途の平均変動率はプラス5.88%で、住宅地はプラス4.53%、商業地はプラス8.70%となりました。
草津駅東口の大路一丁目にある基準地は53万5,000円/㎡で、前年から9.18%上昇。草津駅近くの大路二丁目では、21万円/㎡、同16.67%上昇となった地点もあります。
守山市も全用途でプラス4.26%、商業地はプラス6.33%です。守山駅前の勝部一丁目は24万7,000円/㎡で、前年から9.78%上昇しました。
駅周辺の住宅需要に加え、店舗、事務所、マンション用地など複数の需要が重なる地域では、地価が上がりやすい状況が続いています。
大津・栗東・野洲―沿線と生活圏で堅調
大津市は全用途でプラス2.97%、住宅地プラス2.18%、商業地プラス5.57%です。市域が南北に長く地域差は大きいものの、大津駅、膳所駅、石山駅、瀬田駅など、京都方面への交通利便性が高い地域では需要が続いています。
栗東市は全用途プラス3.30%、野洲市はプラス3.80%。住宅地もそれぞれプラス2.64%、プラス3.06%となりました。
草津や守山で価格が上がるなか、住宅や事業用地を探す層が隣接する栗東・野洲へ選択肢を広げる動きも考えられます。駅へのアクセスだけでなく、幹線道路、駐車場の確保、周辺の生活施設などが評価を左右します。
近江八幡・湖南・甲賀―用途によって動きが異なる
近江八幡市は全用途でプラス1.47%。住宅地はプラス0.74%に対し、商業地はプラス3.47%となりました。近江八幡駅周辺と郊外部では市場が異なるため、市全体の平均値だけで判断しないことが大切です。
湖南市は全用途でプラス1.43%ですが、住宅地はマイナス0.37%、商業地はプラス0.37%です。全用途がプラスとなった背景には、工業地のプラス10.94%という高い伸びがあります。
甲賀市も全用途ではプラス0.68%ですが、住宅地はマイナス0.29%、商業地はプラス1.69%、工業地はプラス4.64%です。
つまり、湖南・甲賀では「市の地価が上がった」というより、工業地や一部商業地が全体を押し上げていると見る方が実態に近いでしょう。製造・物流需要と住宅需要を分けて考える必要があります。
地価上昇=テナント賃料上昇ではない
基準地価は、地域の不動産需要や土地の希少性を知る材料になります。ただし、地価が上がった割合と、店舗・事務所・倉庫の賃料が上がる割合は同じではありません。
事業用不動産では、実際の賃料や空室率、前面道路の交通量、歩行者の動き、駐車場、間口、搬入動線、用途地域、建物の築年数や設備などが収益性を左右します。
駅前の地価が高くても、業種に必要な広さや駐車場が確保できなければ出店候補にならないことがあります。反対に、地価が比較的低い地域でも、幹線道路沿いで車の出入りがしやすく、商圏に合う物件であれば高い店舗需要が見込めます。
地価は「地域全体の方向」を知る資料、賃料は「その物件で得られる収益」の指標として、分けて確認することが重要です。
基準地価を物件選びに生かす3つの視点
1.市平均ではなく、近い基準地を見る
同じ市内でも駅前、住宅地、ロードサイド、工業地域では価格と変動率が異なります。検討物件に用途や立地条件が近い基準地を確認しましょう。
2.地価と実際の募集賃料を分けて見る
地価が上昇していても、空室が多い用途やエリアでは賃料が伸びないことがあります。周辺の募集物件と成約状況も合わせて確認する必要があります。
3.1年の変動だけで決めない
基準地の入れ替えや地域の開発計画などによって、平均値の見え方は変わります。複数年の推移、人口や世帯数、交通量、開発計画なども含めて判断しましょう。
まとめ
2026年の基準地価では、滋賀県の住宅地、商業地、工業地のすべてで上昇幅が拡大しました。
ただし、住宅地では下落地点が上昇地点をわずかに上回り、8市の比較でも、草津・守山など琵琶湖線沿線の強さと、湖南・甲賀における用途別の差が見えます。
これからの滋賀県の不動産市場は、「県全体が上がっているか」よりも、「どの地域の、どの用途に需要が集まっているか」を見ることが、ますます重要になります。
テナントテラスでは、大津、草津、栗東、守山、野洲、近江八幡、湖南、甲賀を中心に、店舗・事務所・倉庫などの事業用物件を取り扱っています。出店エリアの比較、物件の賃料査定、売却・活用についてもお気軽にご相談ください。
※基準地価は2026年7月1日時点の基準地の正常価格です。市別・用途別の平均価格や平均変動率は、基準地の構成によって影響を受けます。個別の土地の査定価格や実際の取引価格、賃料を示すものではありません。
参考情報
・国土交通省「全国の地価動向は全用途平均で5年連続上昇~令和8年都道府県地価調査~」













