長く続いた低金利時代は、不動産経営にとって大きな追い風でした。
比較的低い金利で長期の借入れができたことで、物件取得後の返済計画を立てやすく、多少の修繕や空室が発生しても、収支に余裕を持たせやすい環境が続いていました。
しかし今、その前提が変わり始めています。
日本銀行は2026年7月の金融政策決定会合で、政策金利の目安となる無担保コールレートを1.0%程度で推移させる方針を決定しました。国内銀行の貸出金利も上昇しており、新規の融資だけでなく、既存の変動金利型借入れにも影響が広がっています。
当社も収益不動産を保有・運営する立場です。金融機関から新しい融資条件を聞いたときや、既存借入れの金利見直しを確認したときには、低金利時代とは明らかに違う金利負担を、肌でひしひしと感じます。
今回は、金利上昇局面で賃貸不動産オーナーが確認しておきたい5つのポイントをご紹介します。
※金利上昇局面では、借入条件と物件収支を改めて確認することが重要です。
政策金利1.0%、貸出金利にも上昇が波及
日本銀行の統計によると、国内銀行における新規・長期貸出の平均金利は、2023年6月の0.855%から、2026年6月には1.944%へ上昇しています。
これは国内銀行全体の平均値であり、実際の不動産融資の金利は、借入期間、担保評価、自己資金、借入人の財務内容、金融機関との取引状況などによって異なります。
それでも、低金利が長く続いた時代と比べ、資金調達コストが上がっている傾向は明らかです。
新規融資では最初から高めの金利が提示され、既存借入れでは基準金利の見直しにより返済負担が増えることがあります。オーナーにとって、金利は「ほとんど動かない前提」ではなく、継続的に管理すべき経営項目になりました。
金利差0.5%でも、年間負担は小さくない
金利が0.5%上がると聞いても、数字だけでは大きな変化に感じないかもしれません。
しかし、借入残高が5,000万円ある場合、単純計算では次の差が生じます。
・金利が0.5%上昇:年間約25万円の負担増
・金利が1.0%上昇:年間約50万円の負担増
実際の利息額や毎月返済額は、元金残高、返済方式、残存期間、金利改定の時期などによって変わります。それでも、複数の物件で借入れがある場合や、借入残高が大きい場合には、少しの金利差が年間キャッシュフローに大きく影響します。
一方、金利が上がったからといって、既存テナントの賃料を同じ速度で上げられるとは限りません。建物管理費、修繕費、保険料、固定資産税なども上昇しやすいなか、オーナーの手残りは圧迫されます。
1.現在の借入条件を一覧にする
最初に確認したいのは、現在の借入れがどのような条件になっているかです。
・借入残高
・現在の適用金利
・固定金利か変動金利か
・固定期間が終了する時期
・毎月返済額と最終返済日
・繰上返済手数料や違約金の有無
複数の金融機関や物件で借入れがある場合は、物件ごとではなく、保有不動産全体で一覧にすることが重要です。
「変動金利で借りていることは分かっているが、何を基準に、いつ見直されるのかは把握していない」というケースもあります。まずは金銭消費貸借契約書や返済予定表を確認し、不明点は金融機関へ問い合わせましょう。
2.金利がさらに上がった場合の収支を試算する
現在の金利だけでなく、今後さらに0.5%、1.0%上がった場合の返済額と年間収支を試算しておきます。
確認したいのは、返済額が増えても黒字を維持できるかだけではありません。
・空室が発生しても返済を続けられるか
・大規模修繕の積立てを維持できるか
・固定資産税や保険料の支払いに無理がないか
・一つの物件の赤字を、別の物件や本業の資金で補う状態にならないか
金利上昇に耐えられるかどうかは、表面利回りではなく、返済後に現金がいくら残るかで判断する必要があります。
3.手元資金と修繕余力を守る
金利負担が増えると、繰上返済によって利息を減らしたくなるかもしれません。
ただし、手元資金を大きく減らしてしまうと、空室、設備故障、外壁や屋上防水などの突発的な支出に対応できなくなる可能性があります。
繰上返済が有効かどうかは、借入金利だけでなく、残しておくべき運転資金、今後の修繕計画、繰上返済手数料、新規投資の予定を含めて判断する必要があります。
金利上昇局面で守るべきものは、帳簿上の利益だけではなく、実際に使える手元資金です。
※借入返済だけでなく、空室や修繕に備えた資金も残しておく必要があります。
4.借換えや固定金利への変更は総額で比較する
金利が上がると、別の金融機関への借換えや固定金利への変更を検討する機会が増えます。
ただし、提示された金利だけで判断するのは危険です。
・融資手数料
・保証料
・抵当権の抹消・設定費用
・司法書士報酬
・既存借入れの繰上返済手数料
・固定金利を選ぶ場合の金利差
これらを含めた総額と、残りの借入期間で削減できる利息を比較します。
また、日頃から金融機関へ物件の稼働状況、修繕履歴、決算内容を伝えておくことも大切です。金利だけでなく、借入期間や返済方法を含めて相談できる関係が、金利上昇局面ではこれまで以上に重要になります。
5.新規投資は「借りられる額」より「返せる収支」で判断する
新たに収益不動産を購入する場合、以前と同じ表面利回りでも、借入金利が高くなれば手残りは減ります。
物件価格と家賃収入だけでなく、次の項目を含めて検討しましょう。
・想定金利より0.5%から1.0%高い場合の返済額
・空室率を見込んだ実効収入
・管理費、修繕費、税金、保険料
・将来売却するときの価格と残債
・大規模修繕が重なる時期
金融機関から融資を受けられることと、その物件が安定して利益を残せることは同じではありません。
金利上昇局面では、自己資金を増やす、購入価格を見直す、返済期間を調整するなど、無理のない資金計画がより重要になります。
金利が上がったからといって、慌てて売る必要はない
金利上昇は賃貸経営にとって負担ですが、すぐに物件を売却すべきという意味ではありません。
入居が安定し、返済後も十分な現金が残り、将来の修繕費も確保できている物件であれば、長期保有を続ける選択肢があります。
反対に、低い金利を前提にぎりぎりの収支で購入した物件や、空室・修繕・金利上昇が重なると資金不足になる物件は、早めに改善策や売却時期を検討する必要があります。
大切なのは、ニュースを見て不安になることではなく、自分の借入条件と物件収支を数字で把握することです。
まとめ
低金利時代には、金利は不動産経営のなかで大きく動かない前提になりがちでした。
しかし現在は、借入残高、適用金利、金利見直し時期、返済後の手残りを定期的に確認し、金利上昇を織り込んだ経営が必要です。
当社自身も不動産を保有するなかで、金利負担の変化を実感しています。だからこそ、表面上の利回りだけではなく、空室や修繕、金利上昇まで含めた現実的な収支を確認することが重要だと考えています。
テナントテラスでは、大津市・草津市・栗東市・守山市・野洲市・近江八幡市・湖南市・甲賀市を中心に、事業用不動産のテナント募集、賃料査定、売却相談などを承っています。保有物件の収支や今後の運用についてお悩みのオーナー様は、お気軽にご相談ください。
参考情報
・日本銀行「当面の金融政策運営について」(2026年7月31日)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の融資、税務、法務または投資判断を保証するものではありません。具体的な判断は、金融機関や税理士などの専門家へご相談ください。













