「滋賀県は災害が少なく、比較的安心して暮らせる地域」。そのような印象を持っている方は多いかもしれません。
実際、滋賀県は大規模災害のニュースで名前を目にする機会が少ないと感じられます。しかし、災害が起こらない地域というわけではありません。
近年は、短時間に狭い範囲へ激しい雨が降る、いわゆる「ゲリラ豪雨」や、発達した雨雲が連なって同じ場所に大雨を降らせる「線状降水帯」が各地で発生しています。
滋賀県でも、道路や店舗の浸水、中小河川や水路の急な増水、山沿いでの土砂災害には注意が必要です。今回は、滋賀県で考えられる大雨のリスクと、地域住民・店舗・物件オーナーが平時から準備しておきたいことを整理します。
「ゲリラ豪雨」と「線状降水帯」は同じものではない
一般に使われる「ゲリラ豪雨」は、狭い範囲で突然降る激しい雨を表す呼び方です。ただし、気象庁が使用する正式な予報用語ではなく、気象庁では「局地的大雨」や「集中豪雨」などの言葉が使われます。
局地的大雨は、単独の積乱雲が急速に発達して起こることが多く、少し離れた場所では晴れていても、特定の地域だけ道路が冠水することがあります。
一方、線状降水帯は、次々と発生した積乱雲によって線状の降水域がつくられ、数時間にわたってほぼ同じ場所に停滞する現象です。長時間にわたり大量の雨が降るため、浸水だけでなく、河川氾濫や土砂災害の危険性が急激に高まります。
気象庁は、線状降水帯について発生情報、直前予測、半日前予測を発表しています。ただし、予測には幅があり、「情報が出ていないから安全」とは限りません。雨の降り方と自分がいる場所の危険度を合わせて判断することが大切です。
詳しい解説は、気象庁「線状降水帯に関する情報」で確認できます。
滋賀県でも注意したい3つの大雨リスク
滋賀県でも注意したい大雨による3つのリスク(オリジナル図解)
1.道路や店舗で起こる内水氾濫
短時間に大量の雨が降ると、下水道や側溝で雨水を処理しきれず、低い道路や敷地へ水が集まります。大きな川が氾濫していなくても、店舗入口、地下・半地下、低い駐車場などが浸水することがあります。
2.中小河川や水路の急な増水
滋賀県には琵琶湖へ流れ込む多くの河川や農業用水路があります。局地的な強雨では、小さな川や水路が短時間で増水することがあり、普段の水量が少ない場所でも油断できません。
3.山沿いや斜面付近の土砂災害
山地に囲まれた滋賀県では、山沿いや斜面の近くで土砂災害にも注意が必要です。雨が弱まってから地盤が崩れる場合もあるため、降雨のピークを過ぎただけで安全とは判断できません。
過去には長浜市で1時間84mmの短時間強雨
滋賀県の記録によると、2008年7月18日、長浜市で午前7時から8時までの1時間に84mmの雨量を観測しました。
この雨により、長浜市街では家屋や店舗など11戸が床上浸水、203戸が床下浸水する被害が発生しています。滋賀県は、このような局地的な強雨は県内のどの地域でも発生する危険性があるとしています。
大きな台風が直撃していなくても、短時間の激しい雨だけで店舗や住宅に被害が出ることを示す事例です。詳細は、滋賀県「2008年7月18日長浜市における短時間強雨による水害調査報告」で公開されています。
まず確認したいのは、住所ごとの水害リスク
同じ市内でも、土地の高さ、近くを流れる河川や水路、排水設備、斜面との距離によってリスクは大きく異なります。「滋賀県だから大丈夫」「これまで浸水していないから大丈夫」と地域全体で判断することはできません。
滋賀県の「地先の安全度マップ」では、自宅や勤務先の周辺で、河川や水路があふれた場合に想定される浸水深などを確認できます。市町が公開する洪水ハザードマップには、浸水想定区域と避難所の情報も掲載されています。
自宅だけでなく、店舗、事務所、倉庫、従業員用駐車場、避難経路まで確認しておくことが重要です。
店舗・物件オーナーが平時に確認したい6つの備え

店舗・事業所で雨が降る前に確認したい大雨対策(オリジナル図解)
1.排水口・側溝・雨どいを清掃する
落ち葉やごみで排水口が詰まると、通常なら流れる雨水が建物側へあふれます。屋上の排水口、雨どい、敷地内の側溝は、梅雨や台風の時期だけでなく定期的に点検しておきましょう。
2.止水板や土のうの置き場所を決める
道具を用意していても、保管場所が遠かったり、設置方法を誰も知らなかったりすると緊急時に使えません。入口や搬入口のどこを守るのか、誰が設置するのかまで決めておく必要があります。
3.商品・書類・電気設備を低い場所に置かない
床面に直接置いた商品、重要書類、パソコン、電源タップなどは、わずかな浸水でも被害を受けます。棚へ上げる、重要なデータをバックアップするなど、被害を小さくする工夫が有効です。
4.休業・早仕舞いの判断基準を決める
危険が迫ってから従業員を帰宅させると、移動中の安全を確保できない場合があります。どの情報を基準に営業時間を変更するのか、来店予約者へ誰が連絡するのかを事前に決めておきましょう。
5.貸主・借主・管理会社の連絡先を共有する
漏水、排水不良、停電、設備故障などが起きた際に、どこへ連絡するのかを明確にします。共用部と専有部の対策を分け、貸主と借主のどちらが対応するのかも平時に話し合っておくと、初動が早くなります。
6.火災保険の水災補償を確認する
火災保険に加入していても、契約内容によって水災や水濡れの補償範囲は異なります。建物、設備、什器、商品、休業損失のうち、何が対象になるのかを保険証券や約款で確認しておくことが必要です。
雨が強くなったら「キキクル」で場所ごとの危険度を確認
大雨時には、天気予報だけでなく、気象庁の「キキクル」で現在地周辺の危険度を確認できます。土砂災害、浸水害、洪水の危険度が地図上に色分けして表示されます。
浸水キキクルは10分ごとに更新され、洪水キキクルでは中小河川の急激な増水について、3時間先までの予測を確認できます。
危険度が高まってから、冠水した道路や増水した水路の様子を見に行くのは危険です。自治体からの避難情報や店舗周辺の状況も確認し、夜間や移動が困難になる前に行動することが大切です。
「災害が少ない」という印象を、備えない理由にしない
滋賀県は比較的安心して暮らせる地域という印象があります。しかし、短時間強雨や線状降水帯による災害は、過去に被害が少なかった場所でも起こる可能性があります。
大切なのは、必要以上に怖がることではなく、自宅や店舗がある場所のリスクを具体的に知ることです。
ハザードマップを確認し、排水設備を点検し、避難や休業の判断基準を決める。平時にできる小さな準備が、突然の大雨による人的・物的被害を抑えることにつながります。
参考資料
・滋賀県「2008年7月18日長浜市における短時間強雨による水害調査報告」
※本記事は一般的な防災情報です。実際の避難や営業判断では、気象庁・自治体が発表する最新情報を確認してください。保険の補償内容は契約ごとに異なります。













