2026年10月3日から、滋賀県の最低賃金が1時間1,136円に改定されました。
これまでの1,080円から56円の引き上げで、引き上げ率は5.19%です。滋賀労働局によると、引き上げ額・引き上げ率ともに、2025年度に次ぐ過去2番目の大きさとなりました。
最低賃金の上昇は、パートやアルバイトで働く人の収入に直結する一方、飲食店、小売店、サービス業など、多くの人を雇用する地域の事業者にとっては人件費の増加につながります。
今回は、滋賀県の新しい最低賃金の内容、働く人と事業者への影響、近隣府県との比較、地域経済に起こり得る変化を整理します。
滋賀県の最低賃金は1時間1,136円に
滋賀県の地域別最低賃金は、次のように推移しています。
・2022年度 927円
・2023年度 967円
・2024年度 1,017円
・2025年度 1,080円
・2026年度 1,136円
4年間で209円上昇し、2022年度と比べると約22.5%高くなりました。最低賃金が継続的に上がるなか、働く人だけでなく、雇用する側も毎年の改定を前提に賃金や事業計画を考える必要があります。
最低賃金は、最低賃金法に基づき、使用者が労働者へ支払わなければならない賃金の最低額です。労使が合意していても、最低賃金を下回る賃金の取り決めは有効とはなりません。
最低賃金の改定は、地域で働く人と雇用する事業者の双方に関わります。画像は生成イメージです。
最低賃金は誰に適用される?
滋賀県最低賃金は、滋賀県内の事業場で働く人に適用されます。
正社員だけでなく、常用、臨時、パート、アルバイトなど、雇用形態や呼び方を問わず、原則としてすべての労働者が対象です。高校生や大学生のアルバイトであっても、年齢だけを理由に低い時給を設定することはできません。
適用される都道府県は、原則として労働者の住所ではなく、働いている事業場の所在地で決まります。滋賀県に住み京都府や大阪府の事業場で働く人には、その勤務先がある府県の最低賃金が適用されます。
また、特定の産業には「特定(産業別)最低賃金」が定められている場合があります。地域別最低賃金と産業別最低賃金の両方が適用される場合は、高い方の金額を支払う必要があります。
時給が56円上がると、収入はどれくらい変わる?
改定前の1,080円から新しい最低賃金の1,136円へ上がった場合、同じ時間働いたときの単純な差額は次のようになります。
・1日5時間、月20日勤務の場合 月5,600円増
・1日8時間、月20日勤務の場合 月8,960円増
・週20時間、年間52週勤務の場合 年間58,240円増
いずれも税金や社会保険料などを考慮する前の単純計算です。また、最低賃金に近い時給で働く人だけでなく、既存従業員との賃金差を保つため、その上の時給帯も見直されることがあります。
一方、物価が上昇すれば、賃金の増加分がそのまま生活の余裕になるとは限りません。家計への実際の効果を見るには、手取り額だけでなく、食料品、光熱費、家賃などの支出も合わせて考える必要があります。
大阪・京都と比べた滋賀県の水準
2026年10月20日時点で、大阪府の最低賃金は1,231円、滋賀県は1,136円です。大阪府は滋賀県より95円高くなっています。
京都府は同日時点で1,122円ですが、2026年11月16日から1,180円へ改定されることが決まっています。改定後は、京都府が滋賀県を44円上回ります。
滋賀県南部から京都府や大阪府へ通勤できる地域では、この賃金差が働く場所を選ぶ材料の一つになる可能性があります。ただし、実際の就業先は時給だけで決まるものではありません。交通費、通勤時間、勤務時間の柔軟性、仕事内容、職場環境なども重要です。
県内事業者にとっては、近隣府県との時給差だけでなく、同じ商圏内の求人条件も意識する必要があります。最低賃金を上回っていても、周辺の求人より時給が低ければ、人材を確保しにくい場合があります。
店舗・事業者の人件費はどう変わる?
最低賃金の引き上げによる影響は、従業員数と勤務時間によって異なります。
たとえば、改定前の最低賃金で働くスタッフが10人いて、1人当たり月100時間勤務する場合、56円の引き上げによる賃金の増加額は、単純計算で月5万6,000円、年間67万2,000円です。
実際には、社会保険料など事業者側の負担や、最低賃金より少し高い時給で働くスタッフとの賃金バランスも考慮する必要があります。
特に飲食店、小売店、美容・サービス業などでは、営業時間が長く、複数のスタッフが交代で勤務します。原材料費、光熱費、家賃なども上がるなか、人件費だけを単独で吸収することが難しい事業者もあります。
だからといって、勤務時間や人数を一律に減らせば、接客の質や営業時間、従業員の負担に影響します。必要な時間帯に必要な人数を配置できているか、予約・会計・発注などの作業を効率化できないか、業務全体を見直すことが重要です。

賃金改定への対応は、時給だけでなく、勤務体制や業務効率を含めて考える必要があります。画像は生成イメージです。
賃金上昇は地域経済にどう影響する?
働く人の所得が増えれば、買い物、外食、サービスなどに使えるお金が増え、地域消費を支える可能性があります。安定した賃金は、人材の定着や働く意欲にもつながります。
一方、事業者が増加した人件費を吸収できなければ、商品・サービス価格の見直し、営業時間の短縮、採用人数の抑制などにつながる可能性があります。
価格転嫁を行う場合も、一律に値上げするだけではなく、原価と作業時間を確認し、利益が出にくい商品やサービスから見直す方法があります。営業時間帯別の売上を確認し、来店が少ない時間帯の営業方法を変えることも選択肢です。
最低賃金の引き上げが地域経済にプラスとなるかは、賃金上昇による消費の増加と、事業者のコスト増加がどのようにバランスするかによって変わります。短期的な人件費だけでなく、人材の定着、生産性、価格、サービスの価値を含めて考える必要があります。
最低賃金の計算で注意したいこと
最低賃金との比較には、毎月支払われる基本的な賃金を用います。しかし、支給されている金額をすべて合計して確認するわけではありません。
厚生労働省によると、結婚手当など臨時に支払われる賃金、賞与、時間外・休日・深夜の割増賃金、通勤手当、家族手当、精皆勤手当などは、最低賃金との比較に算入されません。
月給制の場合は、最低賃金の対象となる月給額を1か月平均の所定労働時間で割り、時間額に換算して確認します。固定残業代や各種手当がある場合は、賃金の内訳を整理する必要があります。
滋賀労働局が2026年10月6日に公表した監督指導結果では、2026年1月から3月に調査した284事業場のうち、16事業場で当時の最低賃金を下回る支払いが確認され、是正指導が行われました。
「月給なので問題ない」「手当を含めれば超えている」と思っていても、計算方法によっては最低賃金を下回ることがあります。雇用契約書、賃金台帳、給与計算の設定を改定後の金額で確認しましょう。
事業者が確認したい5つのポイント
1.すべての従業員の時間額を確認する
時給制だけでなく、日給制、月給制の従業員も時間額へ換算します。試用期間中の人や学生アルバイトも含め、雇用形態ごとに確認しましょう。
2.手当を含める前に計算対象を整理する
通勤手当や時間外手当など、最低賃金の計算に含まれない賃金があります。総支給額だけで判断せず、給与項目ごとに分けて確認します。
3.雇用契約書と求人情報を更新する
時給を変更した場合は、労働条件通知書や雇用契約書の変更内容を従業員へ示します。求人サイト、店頭掲示、自社ホームページに古い時給が残っていないかも確認しましょう。
4.周辺の求人相場も確認する
最低賃金を満たすことと、人材を採用できることは別です。同業種や近隣店舗の時給、勤務条件、福利厚生を確認し、自社の求人にどのような魅力を持たせるか考える必要があります。
5.人件費だけでなく業務の流れを見直す
予約、注文、会計、在庫管理、清掃、発注などの作業を確認し、重複や待ち時間を減らします。単純な人員削減ではなく、スタッフが接客や専門業務に集中できる仕組みをつくることが大切です。
賃上げと設備投資を支援する制度も確認を
中小企業・小規模事業者向けには、生産性向上につながる設備投資などと事業場内最低賃金の引き上げを組み合わせた「業務改善助成金」があります。
2026年度の制度では、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上に役立つ設備投資などを行った場合、その費用の一部が助成されます。
ただし、対象となる事業者、申請時期、賃金の条件、交付決定前に設備を購入してはいけないなどの要件があります。「設備を買った後で申請すればよい」と考えず、必ず最新の募集要領を確認してください。
まとめ
2026年10月3日から、滋賀県の最低賃金は1時間1,136円になりました。56円、率にして5.19%の引き上げです。
働く人にとっては収入増加につながる一方、地域の店舗や事業者にとっては、人件費だけでなく、採用条件、勤務体制、商品価格、業務効率を見直すきっかけになります。
賃金が上がれば必ず地域消費が増える、あるいは事業者の経営が必ず悪化する、と単純に決まるわけではありません。働く人が安心して生活でき、事業者も雇用とサービスを継続できるよう、賃金と生産性の両方を考えることが重要です。
テナントテラスでは、滋賀県内の店舗・事務所・倉庫などの事業用物件をご紹介しています。新規出店や移転では、賃料だけでなく、人材を確保しやすい立地、通勤手段、周辺商圏も含めてご相談ください。
参考情報
※本記事は2026年10月20日時点の公表情報をもとに、最低賃金と地域経済に関する一般的な情報を紹介するものです。適用される最低賃金、賃金の計算、助成金の要件などは個別の雇用条件や申請時期によって異なります。詳しくは滋賀労働局、労働基準監督署、社会保険労務士などへご確認ください。













